紙面で紹介された映画のワンシーンだけで、監督が誰だか分かってしまうという独特の雰囲気。迷い込んだら最後な不思議な世界。


アキ・カウリスマキの描く数奇な桃源郷

アンサとホラッチョのラブコメディー


 

久しぶりの新作鑑賞で、今年初の映画。

動きも台詞も少ないから、安心して見ていられた。

 

 アンサ役のアルマ・ボウスキは美人な面立ち。ニコール・キッドマンを平凡かつ庶民的にして、間延びさせた感じ。身を粉にして働く姿が「ドッグヴィル」のグレースと重なったからかも・・・。
 ホラッチョは、「過去のない男」みたいに記憶喪失にはならなかったけど、アルコール依存症から抜け出せたし、病院の酸素吸入器で美味しい空気を吸い、どうやらニコチン依存症のほうも治ったと思えて、とってもほのぼのとした気分になれた。


 

 それにしても、飲んだくれのホラッチョ、バス停で泥酔している姿が犬っぽく見え、グレーハウンドの入った雑種犬みたいだった。ノラ同然の男を見捨てられないアンサったら・・・。

 

名演技のワンコは、アキ監督の飼い犬なんだって!!

さりげなく寄り添う感じがたまらなかった。




  ワンコの体型を観察して♀女の子と判定。なのに「喜劇王」の名前が付けられてるとはね!!。

 

仏頂面の姉妹バンド「マウステテュトット」の曲「悲しみに生まれ失望に身をまとう」がいい味をだしてた。

歌詞の「私は囚人、永遠に 墓場すらフェンスだらけ」がグサリ・・・。

 

 ラジオから流れる「竹田の子守歌」

 1970年代に「赤い鳥」が歌い、放送自粛になってしまった曲。アキ監督はその経緯を知った上で、意図をもって選曲したのでしょう・・・。

 



舞って 落ちて 飛ばされて

雨にうたれ 踏まれても

枯れ葉は くじけない。


 

 アンサが働く工場で作っている重機(?)が、奇妙な形をしていて、食肉工場を連想させるものだった。工場の描写が出てくると当然、「キム・ギドク」も連想してしまったわ・・・。

「気狂いピエロ」のポスター、「はなればなれに」の話題が飛び出してきて「あらら~・・・。」

 その日は、映画を観終わった足で「はなればなれに」でアンナ・カリーナが履いていたデザインに似たパンプスを試し履きするため、靴屋さんに寄ることにしていた。結局、目星を付けていた靴より、ヒールも値段も高いほうを買っちゃったのは「枯れ葉」の台詞に「はなればなれに」が登場したからかも・・・。