梅雨曇りの金鱗湖


 この日は、14歳の夏休みに知り合って無二の友となった、かけがえのない友人を追悼すべく、早朝から彼女との想い出にあふれたお店(茶房)へ行くために早起きをし、由布院へと向かいました。

 

 茶房をあとにしてから、金鱗湖周辺を散策。湖面をのぞくと鯉に混じって、外来種らしき異様な光を帯びた魚が生息していて、気味の悪い大きな赤い口を広げていました。その魚の様子を観察していたら、お寺の鐘の音が鳴り響いてきたのです。それは、午前11時を告げる鐘でした。


 その音色を耳にした途端、突然というか必然的に「これから、お寺にいこう~」と思い立ってしまったのでした。



「佛山寺」の鐘は、なんとも心地のよい響きをもち

 わたしをいざなってくれ、それは5年振りの参詣となりました。

 

 「牛に引かれて、善光寺参り」ならぬ「鐘の音に魅かれて、佛山寺参り」ということです。




亡き友は、その数日前に満中陰をむかえていたので

このような機縁(仏縁)もあるものなんだなと思うと

感慨深いものがありました。





 山門まで登る道の途中で、ウグイスの鳴き声が聞こえてきました。しばし観光地の喧騒を忘れてしまう憩いの地が、湯の坪街道から数分の場所にあるんだと改めて感じ入りました。

 



 ところで、帰宅してから、司馬遼太郎が『街道をゆく』の中で、「ここ(佛山寺)の鐘の音は、郷愁のある響きである。」とふれていらっしゃると知りました。心の和む澄み切った鐘の音は、今回の旅空で、午前11時に鳴り響くと知りました。これからは、時間を合わせて湯布院を訪ね、鐘の音に耳を傾けたいと思います。