SSブログ

東京暮色「原節子とマスク」 [☆映画(Cinema)]

救いようのない結末を知っているので
みるのを避けてきた小津安二郎の映画
「東京暮色」
 
長女:孝子(原節子)の母親に対する強烈な嫌悪感
二女:明子(有馬稲子)は、愛想笑いひとつ浮かべぬ仏頂面
父親(笠智衆)の不甲斐なさ
なんとも暗く、重たい映画
 そんななか、面白い点を探したらけっこう出てきました。
 
深夜喫茶で妹が補導され、警察へむかえにゆく孝子(原節子)
「マスク」姿は、風邪予防と防寒対策を兼ねていると思いきや
東京暮色2.jpg
 不倫の末、父と別れて家を出た母親(山田五十鈴)を尋ねるため、日中に五反田の雀荘へ向かう時も「マスク」姿であった。
ということは「変装のたぐい」になるような・・?
「原節子とマスク」
なにやら妙に艶めかしく見える。
そして、マスクをしたほうが、かえって目立ってしまう原節子
 
せわしない叔母さん(重子)役がお似合いの杉村春子
半ば強引に二女(明子)のお見合い話をすすめる。
東京暮色1.jpg
 お相手は「顔の鼻から下にかけてが、錦之助(当時は中村錦之助)に似ている」らしいというお話。この映画では、叔母のすすめた錦之助に似たお見合い相手とは会うことすらできなかったのに、実生活では、萬屋錦之介(中村錦之助)の最初の妻となった、有馬稲子。この映画で二人は引き合わされたという訳ではないかもしれないけれど・・・たいへん、興味深い。昔は、映画スターの結婚といえば、週刊誌が大きく取り上げたことでしょうから、この辺の話題もきっと出たんじゃないかしら・・・。
 
 「ラージポンポン」「アプレ(アプレゲール)」なんて言葉(死語)は、今どきの若い人は皆目わからないはず。わたしも、「チャンソバ屋」って一瞬「?」だったし・・・。警察署で「女の腰巻なんか盗んで、どうするんだ~」などと取り調べを受けていた男には、大いに笑わせてもらいました。腰巻といえば「早春」で母親(浦辺粂子)に「おッ母さん、腰巻下がってますよ」と言う、息子の康一役だった田浦正巳が、明子の交際相手の木村だった。簡単服(あっぱっぱ)に、シミチョロ(死語)だと思っていたら、まさかの腰巻だった・・・。浦辺粂子は小料理屋(小松)の女将役で登場していました。
また、「お早よう」で、謎の念仏を唱えたり、押し売りを撃退するユニークなお産婆さん役だった三好栄子が、女医さん役で出演しているのを発見できました。
 母親(山田五十鈴)の哀愁漂う演技、可哀そうな母の姿に心が痛んだ。
 陰鬱で暗い映画にもかかわらず、巧い俳優さんたちの出演と小技の効果で、救われた感じがした映画でした。